OPEN CLASS
公開講座
プロジェクトで実施される精鋭講師陣による
事前授業・講座の一部を特別公開しています

Jan 25, 2009 19:15 - 21:15

「僕の町を元気にする方法」パート1

開催日時 2009年1月25日(Sun)19:15 - 21:15
料金 社会人:1,000円 学生:500円
開催場所 駒込地域文化創造館
東京都豊島区駒込2-2-2

募集は締め切りとなりました。

DETAIL
吉澤さんの講義の簡易ではありますが議事を報告します。

■講師
吉澤 保幸 氏
・場所文化フォーラム代表幹事
・場所文化機構副代表
・「とかちの・・・」大店長
・ものづくり生命文明機構地域活性化協議会事務局長
日本銀行、ぴあを経て、 現在はNPO等で「地域活性化」に携わる。

■吉澤さんの印象
論理的で明晰な議論をされとても知性的である一方で、実際に活動を率いるリーダーらしい「熱さ」も備えた方という印象を受けました。
マチオコシ、チイキカッセイカというキーワードはよく耳にするものの、本当に先進的な取り組みはそう多くはないのかもしれません。しかし、事業のファイナンス面から大きなヴィジョンをもってこれに取り組み、グローバル資本主義の論理を補完するものとしてローカルな仕組みを再構築しようとされている、地でいくように有意義な”物語”を生み出されている吉澤さんに、初対面ながら尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。

■所感
講や無尽といった庶民金融といった、かつて存在したような共同体の知恵を見直すことかもしれない、という点も非常に興味深かったです。
有利息の金融、お金がお金をうむという形式が拡大再生産をモットーとする資本主義の最後のフロンティアになって以来登場した複合的な金融工学商品が、現在のサブプライムを始まりとする経済危機を生み出したのだとしたら、お金がお金を産むという構造がそもそも当然であるべきなのか、という疑問がわいてきました。
地方で滞ってしまっているお金の流れをスムーズにするにはどうしたら良いかを考えることと、世界の金融システムを見直すことがつながっているという点でもとてもエキサイティングな講義でした。

第1部:持続可能な地域社会の構想と新たなお金(地域金融)の役割

1.歴史認識と大きな対処方針

価値創造プロセスが都市に集中し、価格というシグナルのみで商品が比較されるため、
長い間、農家をはじめ第一次産業に従事する生産者の方々は“誇り”を奪われてきた。
経済的な偏りが反映し、政治的にも社会が金銭価値に依存、財政肥大化。
しかし現在の恐慌が、社会構造が見直されるきっかけになる。

・都市部の人々は経済状況に翻弄され厳しい状況
・他方田舎の人たちは、過疎、限界集落と呼ばれようともこれから復権が可能なんじゃないかと、元気を取り戻している人もいる。

歴史的にも、恐慌のときは田舎ほど生き残る。
いまこそローカルが復活する時。そのためには地域型のビジネス・雇用を創出し、また同時にこれを支える金融の仕組みが必要である。

■解決すべき問題
・地域が誇りを失っている
・閉鎖されているのをどう開いていくか、都市と繋いでいくか
・金の入るサイクルを確立するか
・自然との共生
それには第一次産業の活性化が欠かせない。
また、ローカル同士のネットワーク構築し、それを生かして、ヒト、モノ、自然の循環を生み出す。
将来的に、一極集中の都市集約型から、繋がりあうローカルを目指す。

そのようなモデルを支えるファイナンススキームの構築が急務。

2.持続可能な地域社会創出の意味-今なぜ地域金融なのか

・資本主義を補完する仕組み/グローバルを補完する仕組み
を、ローカルに求めていく。グローバル資本主義の論理とは一線を画した方策によって、地域活性化を進めていかなければならない。

資本主義は本質的に問題をはらんでいるのではないか?
貧富格差、自然環境問題、食糧問題、過剰なマネーゲーム・・・
金融危機はそもそも資本主義の論理によって生み出された。

(CF「資本主義がなぜ瓦解したのか」 中谷 岩井
自由は野放図ではいけない、倫理の復活 →世界中央銀行の設立が必要か?)


現在は、未来からの預かり物である。これを未来に届ける義務を負っている。
今後は、資本主義一辺倒の考えと決別し、人と人とのつながりによって制御された自由と、倫理を復活させることで、この義務を果たさなければならない。

3.新たな地域金融の役割と仕組み-地域金融機関への期待
地域社会のイメージ

ヒト、モノ、カネの集まりを、生産の川上から川下へのシフトしていく。

現状: 価値想像プロセスが都市に集中、価格というシグナルのみで
金銭価値に依存、財政肥大化、都市に利益集中、地方にはカネもヒトも回らない

これを解決するためさまざまな地域通貨が生まれた。
(成功・継続をしているかはともかく、何らかの成果を刻んでいる。)

■地域通貨だからできる工夫
・利息を期待しないこと
・効力に融通が利く

たとえば、むしろお金も財と同じように減価する、→早くつかなわいと損!(=流通速度のものすごく速い)というお金を創造できる。

■新たな地域金融の仕組みを過去の”知恵”に学ぶ
・無尽/講・・・一月1万を集める。20人なら20万集まる。お金に困ってる人が、入札し、一番低い金額で入札したものが融資を受ける。差額が利息になり、返せるときに返す。
複利じゃないから利息におわれず、仲間同士なので利幅が融通可能。
昔の信用金庫、相互会社等の地域に軸を据えた金融システム
そのような源流を持つ地方金融機関こそがイニシアティヴをとっていくべき。(現在はもはや地域振興につながる金融は、CSRなどで行われるオマケと化している。)

そこでは、グローバル資本主義の論理から離れ、地域の活性化を担うことを前提とすべき。
(結果的にそのような投資がリスクヘッジにもつながる。)
現在は、地域で集めた金を地域で投資せず世界の金融商品や地域外の資本による大規模プロジェクト等に融資しがちである。

■新たなコミュニティビジネス創業にあたり直面する問題の解決が必須
第一次産業の新規立ち上げには・・・
①リスク:スタートアップ事業ゆえ、信用・事業リスクが高い。
②リターン:複利金利のキャッシュフロー創出は困難、上場益もない。
③時間軸:長期の融資が不可欠。

これを解決するキーは「ローカル」
①お金を「貯留」する新たな「投資モデル」―投資・リターンの関係の変革
② お金を「扶助」する新たな「つなぎ融資モデル」―現代版「講」の運営
③ お金を「廻す」新たな「他地域間志民通貨モデル」―農商工・都市連携による地域通貨流通
(Cf.愛媛銀行による、えひめガイヤファンド)

4.新たな社会構想の実現に向けて-新たな多数派の形成と地域間連携の強化
それにはコミュニティビジネスの創出→雇用の創出

それにはこれらのビジネスのファイナンスを支援する必要。
その上で今までの金融の考え方(グローバル資本主義、という前提)を問い直さねばならない。
→お金の意味、あり方を問い直す時期なのではないだろうか?

第2部:ローカルからの新たな社会構想デッサン

1.地域再生と新たな地域金融の具体的デザインと政策提言
地域通貨ブームは下火に。
なぜなら、地域通貨は回転が速くてはじめて意味を持つにもかかわらず、使用を後押しする仕組みが充実していない。なによりコミュニティビジネスを盛り上げることが欠かせない。
・法定・地域通貨を混ぜて使う。
・庶民金融を見直す(昔の信用金庫、相互会社、)
・ビジネス・エンジンが必要。

■その具体的事例、モデルとして「とかちの」

「とかちの」ビジネス・ファイナンススキーム
一口200万円の株式を発行し合同会社を設置、
社員(株主)と株主契約を結び、社員は準オーナーとして、出資者はとかプチ=食事券、即ち、とかちので時間を過ごす権利を得る。その代わり配当は放棄する。

一定期間経過後は200万を引き上げる権利をもつものの、一定割合のこしてもらう。もしくはほかの地域活性化にりようしてもらうよう働きかける。

貨幣との兌換は効かなくても価値のあるものを金融の仕組みの中に取り込むというアイディアの実践。

2.各地での取り組みと他地域との連携

オルタナティブ・バンク、マイクロファイナンス
(これを支えるのは預金者ハンズオンの姿勢)

3.当面のアクションプログラム

<新たな地域金融の仕組みの具体化に向けた当面のアクションプログラム>

●2‐(1)‐①関係:CB創出と連動した志民ファンドと志民通貨の組成
-高崎、愛媛・松山、勝沼、南砺モデル等の具体化(12月~3月)

●2-(1)-②~⑧関係:首長への働きかけと志民との連携施策の具体化模索
-南砺市の新市長を交えての「土徳一揆の講」実施(12月20日)  
-高知県知事、高知市長・副市長との政策勉強会(1月12日)
-財務省幹部、若手他との勉強会(1月15日、24日)
-他自治体への働きかけ(小田原<1月26日>、東京都<1月22日>、山梨県<1  
  月29日>、富山県<2月10日>等)

●補完金融と新たな流通システム構築に向けてのアクション
-経産省流通政策課や産業資金課等を巻き込んでの新たな枠組み作り着手
-財務省・日銀幹部への根回し等の開始(12月下旬~)

●志ある金融機関の巻き込みと地域・志民連携の具体化
-富山銀行(南砺PJ)、庄内銀行(鶴岡商工会議所)、しののめ信金(高崎PJ)、
  山梨中銀(勝沼PJ)、等との直接対話
-愛媛銀行・宇和島商工会議所での講演会(1月9、10日)
-日文研(京都、1月31日)での研究発表、CRD協会への投稿(2~3月)
-「農村と都市の新しい関係を考えるシンポジウムin金山町」(2月14~15日)
-「新たな多数派の思想の形成をめざす100人委員会」(3月1日)
-第2回ローカルサミットの開催(秋、開催地未定)

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募集は締め切りとなりました。